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脂肪注入による豊胸術には昔から文献的な報告がありますが、良い結果を出しにくいと言われています。理由は注入した脂肪の生着に関係することですが、生体内に注入された脂肪は外側から新しく血行が生じ脂肪塊の周囲に繊維性の皮膜を作りながら生着していきます。つまり塊が大きいと全部の脂肪が生着しにくくなり、その結果塊の一部は吸収され、また残った脂肪塊の中央部は栄養が行き渡らず脂肪が溶けてしまうことになります(無腐性脂肪壊死とも表現しますが)。その反応の程度が大きいとせっかく入れた脂肪がほとんど吸収されたり、残った脂肪塊が凸凹に触れたり、左右で形が違う結果になってしまいます。その為出来るだけ注入する脂肪の塊を小さくして血行の良い場所にまんべんなく注入すれば良いのではないかと言う考え方で、筋膜の上下や筋肉内に脂肪を注入する報告もあります。しこりが出来ないという表現は深い部分に小さな脂肪塊を入れることになるためしこりが分かりにくいと言うことです。これらの状態を超音波の検査(乳ガンの検診の際に使用する機械ですが)で見るとやはり脂肪の周囲の繊維性皮膜が白く映り、無数の小さな腫瘍のように描出され検査をう外科の先生がびっくりすることもあります。実際に脂肪注入で豊胸手術を行ってみると思ったより自然な乳房が出来ますが、上記の理由により、せいぜい80-120cc前後の脂肪注入にとどめる場合のほうが安全だと思っています。
(回答者:医療法人社団知足会 百人町アルファクリニック 与座 聡)
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